第三十一代会長 木村真弘  
   
  真言宗豊山派仏教青年会第三十一代会長の大任を仰せつかりました埼玉三号支所持明院の木村真弘と申します。

  ご承知の通り、本会はこれまで、歴代会長に就任してこられた諸先輩方の卓越した指導力をもって発展してまいりました。はからずもこの度、その重責を根本聖道会長より引き継がせていただく事となりましたが、もとより私は、浅学菲才の身でございます。本当に自分がこのような大役を担う事ができるかどうか深慮いたしましたが、これも仏縁と考え、お引き受けする決意をいたしました。しかしながら、皆様のお力添えなくしては、無事に任期を全うできません。不慣れな点が多々あるとは存じますが、周囲の方々からお知恵を拝借いたしながら報恩感謝の一念で、ご奉仕させていただく所存でございます。

  さて、真言宗豊山派仏教青年会は、現代社会に生きる皆さまと共に、人間教育と社会奉仕の実践を通じ、お大師さまの教えをひろく世界に伝えることを目的として、昭和32年に活動を開始いたしました。太平洋戦争の敗戦、焼け野原からの戦後復興がひと段落を終え、高度経済成長へと移りゆく最中の時代に、豊山派では、広く世間の人びとにお大師さまの教えを伝えようという機運が高まり、日々研鑽に努める青年僧侶の活躍を期待する声が出されるようになりました。その活動は、多岐にわたり、養護施設の慰問伝道ならびに全国伝道、総本山長谷寺で開催される牡丹まつりでの布教活動、昭和34年に実施した都内で伊勢湾台風被災者の托鉢募金より続けてまいりました阪神淡路大震災、東日本大震災等の災害支援、声明等の仏教文化財記録保存や一般の方々を対象とした写仏講座など、今日に至るまで様々な試みが行われてきた事は、周知の通りかと存じます。

  一方で、こうした各活動が実施された背景には、私たちを取り巻く社会情勢の変化と、その都度、深刻な問題へ真摯に向き合う青年僧侶の姿勢がございました。戦後の日本は、人口の一極集中化と都市部の急速な発展に伴い、物質的な発展のみ追及される雰囲気が蔓延し、人間同士の結びつきを希薄なものとし、お互いに思いやりの心を持つといった心の豊かさが置き去りにされるようになった現状は、誠に遺憾な事であります。同時に、このような時であるからこそ、諸先輩方が築きあげてまいりました仏教青年会六十年の歴史に学び、お大師さまのみ教えを正しく実践しながら現代社会に活かすという理念へ、いま一度、立ちかえる必要があるのではないかと考えている次第でございます。

  会員をはじめ、諸大徳様各位におかれましては、どうぞ倍旧のご厚情を賜りたく、伏してご指導、ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

 
合掌